行動至上主義への違和感-意味のある行動とは何か-

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近年、自己啓発やビジネス界隈で
「行動することが大切」
「まずは行動しなければ始まらない」

という言説が広く流布されています。

確かにこの主張自体は正しいと思いますが、
解釈があまりにも表層的になっては
いないでしょうか。

現代社会における「行動」の神格化

SNSやビジネス書では、
「とにかく行動せよ」
「完璧を目指すよりまず動け」

といったメッセージが溢れています。

この風潮は、一定の有効性はありつつ
以下のような問題を内包している
作者は考えます:

  • 考えることを軽視単なる活動量を美徳とする
  • 行動の質や目的を度外視した量産志向
  • 「考え過ぎる」ことを否定的に捉える傾向

しかし、
これは本当に正しいアプローチなのでしょうか?

行動の本質的な意味を考える

行動には本来、仮説を検証するという
重要な役割があります。

例えば筋トレを例に考えてみましょう。
確かに筋トレは「とにかくやる」だけでも
ある程度の効果は期待できます。

しかし正しいフォームや適切なメニューの
理解があるかないかで、その効果には雲泥の差
が生じます。

同様に、ビジネスの世界でも「やみくもな行動」と
「戦略的な行動」ではまったく異なる結果を齎す
ことがあります。

ブログを書くにしても、営業活動をするにしても、
製品を製造するにしても、明確な目的意識と戦略が
なければ、その行動は単なる時間の浪費になりかねません。

すでに成功を収めている人々に「行動しろ」
と説く必要がないのは、彼らがすでに目的意識を
持って効果的な行動を取れているから

すなわち

「量」という「変数」を増やすことで「成果の拡大」
が得られ、
またその「再現性」が確認できており、
考えずとも行動するだけで良いシステムがある程度
構築されているからです。

問題は、残念ながらその域に達していない人々です。

変化をもたらさない行動の無意味さ

現状から望ましい変化を生み出さない行動は、
実質的に「何もしない」ことと同じ
です。

単に行動量を増やすことが必ずしも成果に
つながるわけではありません。

それは目標達成に向けた適切な方向性を持った
行動でなければなりません。

「数をこなせば質が上がる」という主張について
も、慎重に考える必要があります。
確かにある種の技能習得においては、
純粋な反復練習が効果を発揮します。

しかしそれは「数」を変化させることが
目的達成に直結する場合に限られます。

むしろ重要なのは、以下の点を十分に
考慮することではないでしょうか:

  • 行動の目的は何か
  • その行動は目的達成に効果的か
  • どのような質的改善が必要か

現場での教訓 – 「行動」が裏目に出た実例

この「行動至上主義」の問題点を、
筆者の実体験からお伝えしたいと思います。

以前、製造業の現場で直面した出来事です。
筆者が携わっていた技術を用いて、
現場の課題解決に取り組むように、
という指示がありました。

この技術自体は操作さえ覚えれば誰でも扱える
ものでしたが、当時はまだ精度や活用方法が未成熟
で誤差や失敗のリスクが相当大きい状況でした。

筆者は
「現時点でこの技術を使っても失敗の量産に
 しかならない」
「まずは技術の完成度を上げ、実用に耐える
 レベルになってから活用すべき」
と主張しました。

しかし、会社上層部を含む
「とにかく量をやってみれば大丈夫だ」
という意見の中で、作者の提言は
受け入れられませんでした。

結果はどうだったでしょうか。予想通り、
取り組みは失敗の連続となりました。

さらに深刻だったのは、それらの失敗時に
「とにかく早く量をこなせ」の号令のもと、
技術改善のための有効なデータの蓄積すら
怠られており、ただ不完全な取り組みの
事例が積みあげられただけだった事です。

これは「考えなき行動」の典型例
言えるでしょう。

その後、作者は現場に赴きこの技術開発に
携わる機会を得ました。当時から、
動く前に考えて戦略的に改善する事の重要性と
効果を身をもって実感していたこともあり、
周囲の「とにかく使え」という声に流される
ことなく、まず技術の精度向上と安定化に
注力することを選択しました。

その結果、技術は実用に十分耐えうるものとなり、
現場での成功事例が着実に積みあげられていき

ました。

このような対照的な経験から、「とにかく行動」
という姿勢は、時として貴重な時間とリソースの
無駄遣いを引き起こす事がある、というロジックが
ある程度正しいものであると実証できたと考えています。

深い思考なき行動の危険性

「考えすぎるより行動せよ」という言葉の背後
には、思考を軽視する危険な傾向が潜んでいる
と作者は考えます。

確かに過度の思考による行動の停滞は避けるべき
ですが、適切な思考プロセスを経ない行動は、
むしろ時間とリソースの無駄遣いに繋がりかね
ません。

意味のある行動とは、明確な目的意識と戦略に基づいたもの
なければなりません。
そのためには、行動の前提となる十分な思考と計画が不可欠です。

これは決して行動を否定するものではありません
むしろ、より効果的な行動のために必要不可欠な
プロセスなのです。

まとめと提言

現代社会における「行動至上主義」の風潮に対して、私たちは批判的な視点を持つ
必要があります。

単なる行動量の増加ではなく、以下の要素を重視したアプローチを提案します:

  • 目的と戦略の明確化
  • 行動の質的向上への注力
  • 定期的な効果検証と軌道修正

「行動する前に考えることは無駄ではない」
というのが、本稿の主張です。

むしろ深い思考と戦略に基づいた行動こそが、
真の成果につながる道筋となるのです。

表面的な「行動論」に惑わされることなく
各自が自身の目標に照らして最適な行動を
選択できる判断力を養う事が必要なのでは

ないでしょうか。

関連記事①;「チャレンジ」の虚像-組織の成長を阻む空虚な掛け声-

関連記事②;組織を蝕む「やればできる」病-現場崩壊を招く根拠なき指示の弊害-

よりライトな記事はこちら↓
①「行動至上主義」の実態と問題点-なぜ「とにかく行動しろ」は危険なのか-

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