「規模の誘惑」という陥穽-売上至上主義が生む組織の自壊-

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 企業経営において、売上高至上主義による評価は深刻な問題を引き起こしています。この問題の本質を、実際のデータから検証してみましょう。

 例えば、シェアオフィス事業を展開していたWeWork、インターネット専用の食品スーパー企業Webvanのケースでは、売上高は急激な成長を示していたものの、最終的に企業価値の毀損を招きました。これらの事例は、インターネット上で公開されている記事で確認できます。

 特に注目すべきは経常利益です。売上高が増加する一方で、利益率が低下するという現象は、企業の収益構造に重大な問題が生じている証左といえると作者は考えています。

問題の本質

  • 売上高の急激な拡大
  • 営業利益率の継続的な低下
  • 運転資金の増大による財務負担の増加

これらの客観的データは、売上規模の追求が必ずしも健全な企業成長につながらないことを示しています。

実務の現場での問題

 問題の深刻さは、実務の現場でより鮮明に表れます。作者の経験では、案件の収益性や利益率についての実質的な議論が、重要な会議の場で殆ど行われないのが実態でした。

 むしろ、売上規模のみが個人の業績評価の対象となり、結果として赤字を出しながらも大型案件を受注する担当者が評価され、昇進していくという逆説的な状況が生まれています。

 このような評価システムは、さらに深刻な負のスパイラルを生み出します。昇進した担当者は、自身の「成功体験」に基づいて部下にも同様の行動を求め、結果として組織全体が無理な条件での受注を追い求めることになるのです。

経営陣の判断の問題

 これは、先に示したような財務指標の悪化の背景にある人的・組織的要因といえます。実際、多くの経営破綻事例において、このような組織的な歪みが指摘されています。

 より本質的な問題は経営陣の判断にあります。表面的な売上高の増加を過度に評価し、その内実を十分に精査しない経営姿勢は、企業の存続自体を危うくする可能性があります。

負の連鎖の発生

 特に深刻なのは、このような経営判断が以下のような負の連鎖を生み出すことです:

  1. 売上至上主義による無理な受注
  2. 利益率の低下と資金繰りの悪化
  3. さらなる売上増加の必要性
  4. 経営基盤の一層の脆弱化

 実際の事例としては冒頭にあげた2社の他にも、インターネット上にいくつもの事例が挙げられ、原因も指摘されています。

 作者の経験も先に挙げた通りですが、更に指摘するとすれば、この負の連鎖から来る赤字の責任は、現場のコスト改善努力の不足として転嫁されるケースが多かったと記憶しています。

結論

 これらの事実は、売上高という単一指標への依存が、いかに危険であるかを示していると考えてもあながち間違いではないでしょう。

あくまで作者の一意見ですが、企業の持続的成長のためには、以下の視点が不可欠です:

  • 利益を伴わない売上増加の危険性の認識
  • 複合的な経営指標による評価の必要性
  • 経営陣による適切なリスク管理

表面的な成長に惑わされることなく、実質的な企業価値の向上につながる経営判断が今、強く求められているのです

現場の実態と財務データが示す客観的事実の両面から、私たちは売上至上主義がもたらす危険性に真摯に向き合う必要があります。それは、単なる評価システムの問題ではなく、企業の持続可能性を左右する重大な経営課題であると作者は考えます。

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