「無能な管理職」
「上司が無能」
「マネージメントが出来ない」
ここ数年、メディアやSNSでよく目にするフレーズです。確かに、部下のモチベーションを低下させる言動や、時代錯誤なマネジメントスタイル、慢性的なコミュニケーション不足など、現場で起きている問題の一因として、管理職の質の劣化が指摘されることは間違いありません。
私自身、無能な管理職に振り回され、会社に退職を勧告した経験から、その批判には一定の理解を示せます。しかしここでは、敢えて厳しい問いかけから始めたいと思います。
「あなたはそんなに有能なのか?」
この問いは、管理職だけでなく、経営層にも、そして彼らを批判する立場になりやすい一般社員にも向けられるべきものです。なぜなら、組織の機能不全はどの階層にも「無能」が存在することによって引き起こされているからです。
全階層に存在する「無能」の実態
まず経営層の「無能」を見てみましょう。無能な管理職を大量生産し、その状況を放置し続けてきた責任は重大です。人材育成システムの不備、形骸化した評価制度、現場との対話の欠如─これらを放置してきた経営層の怠慢は明らかです。
次に管理職の「無能」。時代に合わないマネジメントスタイル、部下との効果的なコミュニケーションの欠如、必要なスキルアップへの無関心など、批判される要素は確かに多く存在します。
しかし、ここで見逃してはならないのが、部下側の「無能」です。以下のような実態が、実は組織の大きな足かせとなっています:
- 基本的なビジネススキルの不足にも関わらず、自己啓発に消極的
- 建設的な指摘に対して「ハラスメント」と即座にレッテルを貼る
- 組織への貢献を考えず、自身の権利ばかりを主張する
- 問題解決への提案なく、批判のみを繰り返す
- チームワークを乱す利己的な行動をとる
これらの「無能」は、実は管理職の「無能」と同等、あるいはそれ以上に組織に悪影響を及ぼしていると作者は考えます。
全階層での改善が必要な理由
組織の機能不全は、どれか一つの層の問題ではありません。むしろ、各層の「無能」が相互に影響し合い、悪循環を生み出しているのです。
例えば:
- 経営層の無策が不適切な管理職を生む
- 管理職の無能さが部下のモチベーションを下げる
- 部下の無能さが管理職の成長を妨げる
- これらが総合的に組織の停滞を招く
求められる総合的なアプローチ
この状況を改善するためには、全階層での同時改革が必要です:
経営層には:
- 明確な人材育成ビジョンの策定
- 実効性のある評価制度の構築
- 適切な教育機会の提供
管理職には:
- 現代に即したマネジメントスキルの習得
- 効果的なコミュニケーション方法の確立
- 部下の育成に対する責任感
そして部下には:
- 基本的なビジネススキルの確実な習得
- 建設的な批判と提案の姿勢
- チームへの貢献意識
- 自己啓発への積極的な取り組み
最低限これらを実行して初めて、組織力の向上を図る準備ができたと言えるでしょう。
まとめ:改革は相互の「無能」を認識することから始める
組織の問題は、特定の層だけの「無能」に起因するものではありません。すべての階層に存在する「無能」を直視し、それぞれが改善に取り組む必要があります。
他者の「無能」を非難する前に、自身の「無能」にも正直に向き合う。そして、組織全体として、それぞれの「無能」を克服していく覚悟を持ち、具体的な取り組みを始める。
これは決して容易な道のりではありませんが、この認識なくして真の組織改革は進まないでしょう。「無能」の相互批判から脱却し、建設的な改善の議論を始めることが、今、すべての組織に求められているのではないでしょうか。
この記事が、組織における建設的な対話と改善のきっかけとなれば幸いです。
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