近年、経営者による場当たり的な方針転換を「アジャイル経営」などと美化する風潮が蔓延しています。作者はこれを、経営能力、もしくは流れや本質を見極める力の欠如を糊塗する、危険な自己欺瞞ではないかと感じています。
経営陣の無能ぶりを目の当たりにして
作者は実際に、このような経営陣の無能ぶりを幾度となく目の当たりにしてきました。
ある案件では、作者が現状分析に基づいて提案した技術戦略を経営陣は一蹴。まったく逆の方向性を「トップの判断」として強要してきました。案の定、その施策は成果が得られず失敗。
そして数ヶ月後、今度は彼らが、作者が当初提案していた戦略とほぼ同じ内容を「新たな経営判断」として指示したのです。しかも、あたかも自分たちの卓見であるかのように。
このような理不尽な体験は一度や二度ではありません。むしろ、大企業の経営陣による典型的な行動パターンといえるでしょう。彼らは実務から遊離した判断を下し、その失敗を「チャレンジの結果」などと美化します。一方で、部下の些細なミスには容赦ない批判を浴びせます。
無計画な方針転換の弊害
無計画な方針転換を繰り返す経営者たちは、自らの致命的な判断ミスを「時代に即した柔軟な対応」などと強弁します。しかし、これは以下のような深刻な組織的腐敗の表れです:
- 部下には完璧を求めながら、自身の愚策については「成長の過程」と開き直る傲慢な二重基準
- 実務を知らない机上の空論を「高い視座からの判断」と強弁し、現場の専門知識を蔑ろにする独善
- 現場からの提案を一蹴しておきながら、後に同じアイデアを自分の発案として提示する厚顔無恥な態度
経営陣は往々にして「視座が違う」「スピード感が必要」などと主張しますが、これは完全な詭弁です。結果として現場の提案が正しかったという事実は、彼らの視座が現場より低く、判断力も劣っていたことを如実に示しているのではないでしょうか。(関連記事1,関連記事2)
大企業における経営手法の問題
とりわけ問題なのは、このような経営手法が大企業ほど横行していることです。彼らは自身の判断ミスを反省するどころか、同じ過ちを堂々と繰り返し、組織を着実に蝕んでいきます。
「会社のため」「組織のため」という建前は、単なる保身のための方便です。本当に組織のことを考えるのであれば、より正確な判断を下し、実績を出している現場の人間に経営を譲るべきところを、彼らは己の地位にしがみつき続けます。
日本企業の凋落は、このような無能な経営者たちの温存が主因の一つではないでしょうか。作者の経験した理不尽な判断の繰り返しは、周囲の声からも日常的に起きていると聞きます。
特に深刻なのは、このような経営者たちが、自らの無能さを「視座の違い」や「スピード経営」という聞こえの良い言葉で隠蔽することです。これは単なる欺瞞であり、組織に対する背信行為といえます。
結論:無能な経営者たちの一掃が不可欠
結論として、日本企業の再生には、このような無能な経営者たちの一掃が不可欠ではないでしょうか。朝令暮改を美化する風潮は、彼らの保身を助長するだけの有害な考えです。
真の経営者とは、確かな見識と一貫した判断力を持ち、必要な時には自らの非を認められる人物です。少なくとも作者が身近で見てきたいわゆる大企業の経営陣の大半は、この基本的な資質すら欠いているように見えます。
逆に、中小企業や小規模ながら自身で創業された経営者の方々の方が、自ら動き、失敗し、反省し、改善し、成果を出すという点において、遙かに優秀である場合が多かったです。
このまま上述のような反省なき経営者たちによる朝令暮改を容認し続ければ、日本の「失われた30年」はさらに続くでしょう。私たちは、この欺瞞的な風潮に断固として異を唱え、真の経営改革を求めていく必要があるのではないでしょうか。
もしくは、そういった支配体制から脱却し、自分自身で生き抜く力を身に着け、自立して生きていく事が肝要であると作者は考えます。
補足:美化される朝令暮改への解決策
ここまでで「朝令暮改」という言葉で美化されがちな、無能な経営層による場当たり的な判断が横行している現状について、その問題点を具体的に指摘しました。
最後に、この深刻な問題に対して私たちに何ができるのか、具体的な解決策を考えていきたいと思います。
まず大前提として「意思決定だけがトップダウン型」の組織構造を持つ日本の大企業において、現場レベルの意見が経営層の意思決定に影響を与えることは容易ではありません。
しかし、だからといって諦めるのではなく、以下の3つのレベルでのアプローチを組み合わせることで、現状を打破する糸口が見えてくると作者は考えます。
1. 組織レベルでの改革
透明性と説明責任の強化
経営判断のプロセスを可視化し、なぜその決定に至ったのか、その根拠を明確に説明する責任を経営層に課すことが重要です。社内システムなどを活用し、誰でも決定プロセスを確認できるような仕組み作りなどが考えられます。
多様な意見を反映する仕組みづくり
特定の層の意見が優先されるのではなく、年齢や役職、所属部門に関係なく、多様な意見を吸い上げ、意思決定に反映できるような制度を導入する必要があります。例えば、提案制度の改革や、現場の声を直接経営層に届けるための意見交換会などを定期的に開催することが考えられます。
評価システムの見直し
短期的な成果だけでなく、長期的な視点に立った戦略策定や、そのための努力を正当に評価できるような評価システムを構築する必要があります。
2. 個人レベルでの行動
問題意識の共有と発信
まずは、現状の問題点について、周囲の人々と共有し、危機感を広げていくことが重要です。社内SNSや勉強会などを活用し、積極的に意見交換を行いましょう。
スキルアップと自己防衛
無能な経営層に振り回されないためには、自身の市場価値を高め、いつでも転職できるような準備をしておくことが重要です。専門スキルの習得や資格取得、人脈形成など、自身のキャリアプランをしっかりと見据え、行動していきましょう。
起業という選択肢
組織の中で変革を起こすことが難しいと感じるならば、自ら起業し、新しいビジネスモデルを創造するという選択肢もあります。
3. 社会全体での意識改革
「朝令暮改」の美化を許さない風潮
メディアや社会全体で、場当たり的な経営判断を批判し、継続的な成長を重視する企業文化を醸成していくことが重要です。
投資家による監視の強化
投資家もまた、企業の長期的な成長を促すために、経営層の資質や能力を厳しく評価し、短期的な利益ではなく、持続的な価値創造を重視する姿勢を示す必要があります。
これらの解決策は、どれも一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、現状の閉塞感を打破し、日本企業が再び国際競争力を獲得するためには、私たち一人ひとりが当事者意識を持ち、それぞれの立場から行動を起こしていくことが不可欠だと作者は考えます。
この問題提起が、より多くの人々の意識改革のきっかけとなり、日本企業の未来を明るく照らす光となることを願っています。
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