「部下層モラル」の崩壊-主体性なき世代の自己保身と腐敗層の親和性-

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 近年、多くの組織で表面化しているworkplace toxicity(職場の有害性)について、特に部下層に多く見られる利己的な行動パターンと、その背景にある構造的問題を検証してみたいと思います。

危機的状況における部下の行動選択

 作者も経験した顕著な事例としては、危機的状況における部下の行動選択があります。

例えば、ある問題の改善に必要な施策と行動が、自身にとって手間の増加や社内イメージの低下などの不利益が及ぶ可能性が生じた際、彼らには突如として細部にこだわった作業確認等を始め、自らの業務範囲、責任範囲を極小化しようとする傾向が多くありました。

彼らは、改善がなされない場合の同僚、組織への悪影響を考慮せず、ただひたすらに利己的な自己防衛に徹したのです。

背景にある要因

 このような行動パターンが生まれる背景には、以下の要因が考えられます:

  • 評価制度の歪み
     個人の成果主義が過度に強調され、チームワークや協調性が軽視される傾向
  • コミュニケーション不全
     上下関係の硬直化により、健全な対話や意見交換が阻害される状況
  • 責任の所在の不明確さ
     組織としての意思決定プロセスが不透明で、個人が過度にリスク回避的になる環境

これら背景は単一で作用する場合もあれば、複合的に作用する場合もあります。

より深刻な問題

 加えて、より深刻な問題として、組織内での立場や既得権益を維持するために、意図的に他部署の部下を操作し、組織の機能不全を引き起こそうとする人間の存在が挙げられます。

この種の行為は、単なる利己的な行動を超えて、組織に対する積極的な破壊行為といえます。

組織文化の影響

 このような状況を踏まえると、こうした問題を生み出す土壌は、必ずしも部下層だけの問題ではないと作者は考えています。マネジメント層の対応や組織文化の在り方も、部下たちをこのような行動に追い込んでいる可能性が十分に考えられます。

しかし、あえて厳しいことを書きますが、こうした腐敗への抵抗力個人の資質によって大きく異なります。

どのような厳しい環境下でも強固な倫理観を保持し続ける人もいれば、上司への失望や、腐敗層からの誘惑、改善の見えない現状への諦めなど、様々な要因によって健全な判断力を失っていく人もいます。

すべてを個人の資質の問題とすることは間違いですが、一方で個人の資質が大きなファクターであることは間違いないでしょう。

個人の資質と組織構造の相互作用

 また、現代においては、受動的な教育環境で育った世代特有の課題も浮かび上がってきていまるのではないでしょうか。

作者の主観にはなりますが、こうした環境で育成された人の多くは、自ら考え、判断し、行動するという主体性よりも、与えられた環境や指示に順応することを優先する傾向が強いことがよくありました。

結果として「利益や安全を提供する」という形で接近してくる腐敗層の働きかけに、脆弱性を示しやすい状況が生まれています。このような個人の資質と組織構造の相互作用が、問題をより複雑化させている要因の一つといえるでしょう。

職場における権力構造の歪み

 その上で、職場における権力構造の歪みは、これらの有害な行動パターンを増幅させる温床となっています。例えば、以下のような構造的な問題が散見されます(あくまで一般的な事例として):

  • 中間管理職が自部署の既得権益を守るため、部下に他部署との協業を意図的に制限させる
  • 特定の上位者に従順な人材のみが登用され、健全な異論や改善提案が封殺される
  • 非公式な人間関係や派閥が、公式な指揮命令系統より優先される

このような構造的歪みは、組織力の持続的な劣化を引き起こす可能性が高い、という点で特に注目すべき問題です。

改善への道筋

こうした課題に対する改善への道筋として、一般的な施策としては以下のようなものがあるかと考えます:

第一段階:組織の現状把握と分析

  • 匿名性を確保した従業員アンケートの定期実施
  • 外部専門家による組織診断の実施
  • 過去の問題事例の体系的な検証

第二段階:制度・システムの整備

  • 360度評価制度の導入による多面的な人事評価
  • 内部通報制度の実効性強化
  • 定期的な部署間ローテーションの制度化

第三段階:組織文化の改革

  • 経営層による改革方針の明確な提示と定期的な進捗確認
  • 部門横断的なプロジェクトチームの積極的な編成
  • 改善提案制度の充実と、提案者への適切な評価

これらの施策は、組織の規模や状況に応じて適切にカスタマイズする必要がありますが、導入すればある程度は有効と思われます。

しかしながら、この仕組みでは本質的な解決は難しく、腐敗層に都合が悪ければすぐに骨抜きにされる可能性が高いと作者は考えます。これを防ぐには、腐敗することによって得られるメリットをなくす健全な判断と行動のメリットを具体的かつ顕著な褒章のような形で提供する、などの施策が有効でしょう。

組織運営の観点からは、この問題の解決には、個々の資質強化や倫理観の醸成を図りながら、同時に組織全体としての構造改革も進めていく必要があります。それには相当な覚悟と実行力が必要となりますが、組織の健全性を維持するために避けては通れない課題だと考えられます。

一方で、作者の一意見ですが、個人(部下層)の腐敗、劣化の責任を、短絡的に上司、組織に押し付けることは単なる自己改善からの逃避であると考えます。

結論

私たちは、この問題を個人か組織かという二者択一的な視点で捉えるのではなく、両者の相互作用を踏まえ、包括的な解決策を模索していく必要があります。そして何より、この課題に向き合う勇気と決意を持つことが、組織のリーダーには求められているのではないでしょうか。

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