「貴方の受け止め方の問題です」
「もっと自責で考えるべきです」
「他責では何も変わりません」
これらの言葉を、あなたも一度は言われたことがあるのではないでしょうか。
近年、ビジネスの世界で異常なまでに称賛される「自責思考」。しかし、この建前の裏で、
組織の責任放棄という醜い現実が進行しています。
この記事では、近年社会で称賛されている「自責思考」が、実は「組織的な暴力」として機能している実態を、徹底的に暴いていきたいと思います。
自責思考は現代の「精神的暴力」である
組織の構造的問題を指摘すると、決まって返ってくる返答。
「それはあなたの努力不足です」
「もっと前向きに考えましょう」
「自分を変えることから始めましょう」
これらは、いじめ加害者が被害者に対して
「いじめられる側にも問題がある」
「いじめられる側が強くなれば解決する」
と主張する際の問題のすり替えの手口と驚くほど
酷似しています。
両者に共通するのは、権力を持つ側が、問題の本質から目を逸らし、弱者に責任を押し付ける構図です。これは明確な「精神的暴力」と呼ぶべきものです。
組織の無能と怠慢を覆い隠す煙幕
自責思考が組織にとって都合が良い理由は明白です。
本来、「組織が取り組むべき問題」を、
すべて「個人の努力の問題」にすり替える
事ができるからです。例えば
・長時間労働は「時間管理能力の問題」
・パワハラは「コミュニケーション能力の問題」
・待遇格差は「実力不足の問題」
・メンタルヘルスは「心の弱さの問題」
にすり替えられていきます。
本来なされるべき労働環境の改善、ハラスメント対策、公平な評価制度の確立、
メンタルヘルスケア体制の整備。これらへの投資や改革を怠り、その責任を個人に押し付ける。
これこそが、組織における自責思考の本質的な機能になってしまっている、
と作者は考えています。
洗脳のメカニズムと破壊的影響
より深刻なのは、この自責思考が巧妙な洗脳システムとして機能していることです。組織の構造的問題の個人化、「前向きでない」というレッテル貼りによる批判の封じ込め、継続的な責任転嫁による自己否定の内面化、そして連帯の分断。(関連記事)
このプロセスを経て、従業員は組織の問題に対する批判的視点を失い、自己否定と過剰な自責に追い込まれていきます。
その結果、個人には慢性的な自己否定、メンタルヘルスの悪化、キャリアの停滞、人間関係の歪みがもたらされます。組織にも、本質的な改革の遅れ、人材の疲弊と流出、組織への不信感、イノベーションの停滞という深刻な影響が出てきます。
「自責」を拒否する者の自己欺瞞
ここまでは自責を強要する側の問題を取り上げてきましたが、もう一つ別の視点から、重要な事を認識しておく必要があります。それは、組織からの正当なフィードバックまでをもハラスメントと曲解し、自己改善を放棄する人間もまた一方では存在する、という事実です(主に部下層の人間に多いです)。
これはむしろ「ハラスメント」という言葉を
濫用した「新たな責任逃れ」に他なりません。
能力不足の指摘を「パワハラ」とレッテル付けし、業務上の正当な要求を「過度なプレッシャー」と曲解する。建設的な批判を「人格否定」と誤認し、具体的な改善案を示されても「精神的暴力」と主張する。このような態度は、自己の成長機会を放棄するだけでなく、組織の生産性を著しく低下させ、さらには真のハラスメント被害者の声を貶めることにもなります。
結果として、チーム全体のモチベーションを損ない、組織の健全な成長を妨げる要因になります。
真の問題解決者となるために
組織批判は、自己の責任領域で着実な成果を出し、具体的な改善提案を伴い、建設的なフィードバックを真摯に受け止め実践していることを前提に、初めて正当性を持ちます。これらの条件を満たさない批判は、単なる不満の表明に過ぎません。
真の改革者として認められるためには、まず自身の能力とスキルの向上に継続的に投資し、具体的な代替案を提示できる実力を備える必要があります。また、建設的なフィードバックと破壊的な暴力を正確に峻別する判断力も求められます。これは単なる理論や知識ではなく、実践の中で培われる能力です。
結びに:バランスの取れた視点の重要性
真の改革は、不当な責任転嫁を拒否しつつ、自らの責任は確実に果たすという、バランスの取れた姿勢から始まります。組織の変革を望むのであれば、まず自らが変革の模範とならなければなりません。それは決して容易な道のりではありませんが、この努力を怠る者に、組織を批判する資格はないと言えるでしょう。
あなたも同じような経験をされていませんか?
この記事があなたの中にある「モヤモヤ」を言語化する一助となれば幸いです。そして、私たち自身の責任について考えるきっかけにもなれば、より建設的な議論が生まれるかもしれません。
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