「自己変革」の美談と腐敗-ビジョンは誰の餌になるのか-

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最近、自己変革で成功した、という記事をよく見かけます。ある記事では、上司に諭された結果、リーダーが「ビジョン共有型」に自己変革し、成功した事が書かれていて、検索上位に来ていました。

私にも似た経験はありますが、残念なことに、現実は持ち上げられた美談ほど綺麗なものでも単純なものでもありません。

掲げられた高尚なビジョンが怠惰な餌取りの餌食となり、組織を腐らせる姿もいくつも見てきました。

今回はその実態を抉りだしてみようと思います。

1. 自己変革の美談と裏側

「このままではリーダーのポジションを失うぞ」と言われ、自己反省の結果、ビジョン共有によって皆で成果を出したという話はよくあります。

私も似たような方法で成果を上げた事もありますが、現実はそこまで甘くありません。吊り下げられた餌に群がる馬のような人間達によって、ビジョンが歪められ、本質的な成果も出せなくなった例も多くあります。

2. 知恵が腐敗を招く

私の経験した大企業では、ビジョンが空っぽの「見かけの成果」に堕ちやすい傾向がありました。幹部の妄想に媚び、上層部は質を見抜けず、見かけ上は立派な成果を出す怠惰な輩を好評価します。

こういった「見かけ上は立派な成果を出す人間達」は、労力や痛みを伴う本質的な成果ではなく、自身がリスクを負わず、労力も最小限にしながら評価だけは得られるように執念とも思える知恵を出し、時にはビジョンや理念すら歪める程の力を発揮します。

結果として評価だけは上がり、組織としての競争力は低下し、徐々に死に向かう、という状態が出来上がります。

恐らく私のいた組織は近い将来、こうなるでしょう。

そのきっかけとなる情報も私は持っていますし、より有名な例を挙げると、いま経営危機に陥っている「かつては隆盛を誇った某自動車会社」も似たような状況にあった、と人づてに聞いています。

3. 生存者バイアスと自責の詭弁

残念な事ですが、巷にある自己変革の成功例の記事は生存者バイアスの側面を持つ、と作者は思っています。

私もたまたまいくつかの仕事で成果を出せましたが、潰されるリスクもありました。

「自責しろ」「自己変革しろ」を振りかざす人間の大半は、自身の変革からは逃げ、責任を他者に押し付ける為の便利な言葉として「自責」「自己変革」を使っています。

私の意見としては「自責、自己変革を謳うのであれば自分も実践すべし」です。

4. 現実的な解決策が必要

私は腐敗を切り、実現性を見極め、具体的な手を打つことでいくつかの成果を出しました。

しかし、組織の自己浄化力や上層部の眼力、正しい倫理観がなければ、これらの成果も一時的な効果にしかならず、組織力低下の腐敗は止まりません。

「協調」や「ビジョン」という言葉も自己甘やかしや成果誤魔化しの道具に堕ちるでしょう。

結び:

自己変革は、「大切」ではありますが「万能」ではありません。生存者バイアスであり、人によっては潰されます。

時には腐敗を斬り伏せる力も必要です。


そうやって成功した例もあるのですから(*)。

あなたならどうしますか?、

(*)意見は分かれますが、某アパレルメーカの例はこれに該当するのではないでしょうか。

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